眼鏡にコンドームを付けていたLeft Eye
MVの冒頭部分だけでなく、MVの後半でもメンバーの名前が繰り返し表示された"Ain't 2 Proud 2 Beg"は、自己紹介的な要素を強く打ち出したTLCのデビュー・シングル。
TLC
Ain't 2 Proud 2 Beg
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'91年11月にリリースされたこの"Ain't 2 Proud 2 Beg"は、同年の4月にリリースされたBoyz Ⅱ Menのデビュー・アルバム『Cooleyhighharmony』のメイン・プロデュースを担当したDallas Austinが手がけた楽曲で、全米シングル・チャートは最高6位を記録、'92年のビルボード年間シングル・チャートは36位、また第35回グラミー賞「Best R&B Song」にノミネートされるなど、後のTLCの快進撃に相応しい結果を残すことに。
曲名の「Ain't 2 Proud 2 Beg」を直訳すると「懇願することは恥ずかしくない」と言った意味合いで、「男性がプライドを捨てて自分の元へ戻ってくることを望み、女性から男性にセックスを求めることを恐れていない」という内容を歌った、デビュー曲にしてかなりセクシーな内容を歌った過激な曲。
そして、このデビュー・シングルで何よりも衝撃的だったのが、ラップ担当のLeft EyeことLisa LopeがMVで披露した目元。
「左目」という意味のニックネームで親しまれたLeft Eyeの、まさにその左目にコンドームを付けた眼鏡をかけて登場するという、あまりにも異彩を放った演出が当時大きな話題を集めました。
ただ注目を集めるために施したジョークではなく、Left Eye自身が「Safe Sex (安全なセックス)」という考え方の持ち主だったことが、この演出をするに至った大きな理由だと思いますが(MV内でも「Safe Sex」の文字が描かれています)、「この"Ain't 2 Proud 2 Beg"のリリースが'91年だった」というタイミングも大きく関係。
'91年後半に撮影されたという"Ain't 2 Proud 2 Beg"のMVですが、同年の11月7日に世界中に衝撃を与えた出来事が起こり、それがNBAプレイヤーMagic JohnsonのHIV感染という衝撃のニュース。
Magic JohnsonがHIV感染を発表する前、当時はまだ世間的に性感染症への意識や関心が低かったようで、そんな矢先に性に関する内容を歌った"Ain't 2 Proud 2 Beg"が実にタイムリーなタイミングで発表され、皮肉なことにMagic Johnsonの悲しいニュースと相まってTLCへの関心も一気に高まることに。
とは言え、当時まだ何の実績もないTLCが、デビュー・シングルでセックスについて歌いコンドームをアピールするという演出は、かなりハイリスク・ハイリターンだったようにも思えますが、恐らくこの内容に踏み切れたのはSalt-N-Pepaの"Let's Talk About Sex"の地ならしがあってこそ。
"Ain't 2 Proud 2 Beg"より3ヶ月早い'91年8月にリリースされたこの"Let's Talk About Sex"は、その名の通りセックスをテーマに歌った楽曲で、「この曲はラジオでプレイしてもらえないかもね」という歌詞が盛り込まれるほど、当時の女性アーティストが歌う曲としてはかなり踏み込んだ内容。
'91年は、女性アーティスト達によって性表現が大きく変化した年と言えるかもしれませんね。
Salt-N-Pepa
Let's Talk About Sex
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