『Girls Night Out』に収録される予定だった"Snooze"
女性シンガーSZAが2022年に発表したセカンド・アルバム『SOS』は、レジェンド達が残した偉大な結果と並ぶ、様々な記録を打ち立てることに。
全米アルバム・チャート
7週連続1位*
*女性アーティストによるR&Bアルバムが初登場で1位を獲得して以降、これだけ長期に渡って1位を維持したは、Whitney Houstonの'87年作『Whitney』以来(11週連続1位)。
全米アルバム・チャート
1位獲得総週10週*
*R&B/ヒップホップのアルバムが10週間以上同チャート1位を獲得するのは、Drakeの2016年作『Views』以来(13週1位)で、女性アーティストによるR&Bアルバムとしては、Mariah Careyのデビュー作『Mariah Carey』以来(11週1位)。
全米R&B/ヒップホップ・アルバム・チャート
1位獲得総週18週*
*これまで、17週にわたり首位を獲得していたAretha Franklinの'68年作『Aretha Now』が同チャートの1位獲得総週の最長記録だったものの、『SOS』が54年振りに記録更新。
2023年ビルボード年間アルバム・チャート
3位
第66回グラミー賞
「Best Progressive R&B Album」受賞
SOS
SZA
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リリース直後から歴史的名盤と化したこのアルバムからは計4曲がシングルカットされ、最後のシングルとなった"Snooze"は、『SOS』に引けを取らない結果を残した、こちらもR&B史に残る歴史的名曲に。
全米シングル・チャート
最高2位
全米R&B/ヒップホップ・ソングス・チャート
最高2位
2023年ビルボード年間シングル・チャート
9位
第66回グラミー賞
「Best R&B Song」受賞
そんな"Snooze"は、Muni Longが「あなたとだったら、どんなことでも何時間もやれる」と歌った"Hrs and Hrs"のように、「あなたの為なら、どんなことでも出来るし、どんな女にでもなれる」と、恋人への深い愛情を歌ったラブ・ソング。
曲名の「Snooze」は、スマートフォンのアラームを一時停止させる機能としてお馴染みの、あの「スヌーズ」を指し、直訳すると「居眠り」
SZAは、曲中のコーラス・パートで「Snooze」を次のように歌っています。
「あなたと一緒にいると、私は失うものなんてないわ。
どうしたら居眠りして、大切な瞬間を見逃せるの?
あなたは大切な人なのに」
甘く優しいメロディが印象的なこの曲は、Ariana Grande, Chris Brownらの楽曲を手がけたプロデューサー・チームThe Rascals, スコットランド人プロデューサーのBlair 'BLK' Ferguson, そしてR&BレジェンドBabyfaceの3者が手がけた楽曲で、当初はSZAのアルバム用としての曲ではなく、Babyfaceのアルバム『Girls Night Out』に収録される予定だったとのこと。
SOS
SZA
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「"Snooze"は元々SZA用の曲ではなかった」
Babyfaceの弟子であり、またブロードウェイのミュージカル俳優としても活躍する、"Snooze"を手掛けたThe RascalsのメンバーLeon Thomas IIIは、「REVOLT」のインタビューにて次のようにコメント。
「"Snooze"は、元々SZAのアルバム用の曲ではなかった。この曲は、Babyfaceのアルバム『Girls Night Out』の為に、彼女がやったコラボレーションだったんだ。 俺達は基本的にクリエイティブで、Babyfaceに部屋を出入りしてもらいながら、パートを録音していった。 ゼロから全体を構築する作業は美しかった。そこにエゴはなく、その日の内に何かクールなものを作ろうとしていたよ。そして俺達はその日のうちにビートを作り、彼女はその日のうちに曲をレコーディングしたんだ」
Babyfaceと言えば、Boyz Ⅱ Men"End of the Road"、Bobby Brown"Every Little Step"などを生み出し、'80年代から現在まで、シーンの最前線で活躍し続けるR&B界のマエストロで、『Girls Night Out』はBabyfaceが2022年に発表した、女性シンガーのみを集めて制作されたアルバム。
このアルバムに参加した女性シンガー達は次の通り。
・Angie Martinez
・La La Anthony
・Ari Lennox
・Kehlani
・Ella Mai
・Queen Naija
・Coco Jones
・Tiana Major9
・Tink
・Baby Tate
・Muni Long
・Amaarae
・Sevyn Streeter
・Tkay Maidza
・Doechii
・Jenevieve
・BJRNCK
残念ながらSZAは『Girls Night Out』に参加しなかったものの、BabyfaceはSZAの才能を「REVOLT」のインタビューにて次のように絶賛。
「彼女はスタジオにやってきて、いくつかの曲を録音した。そして"Snooze"はその中の1曲だったんだ。SZA... 彼女は天才だと思う。実際のところ、"Snooze"はSZAがほぼ1人で書いた曲なんだ。私は単にギターを演奏して、トラックを作るのを手伝っただけさ。彼女は信じられないほどの能力を持った作詞家であり、素晴らしいアーティストだ。私は彼女の声が大好きだよ」
Bobby Brownが歌った"Roni"や、Johnny Gillが歌った"My My My"などは、元々Babyfaceが自分で歌う為に作った曲だったものの、曲の可能性を最大限引き出す為に、Babyfaceは潔く他のアーティストに楽曲を差し出してきた過去が何度もあった為、SZAを「天才」だと絶賛した経緯からも、Babyfaceとしては"Snooze"をSZAのアルバムに収録して欲しいと強く望んだのかもしれないですね。
Girls Night Out
Babyface
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「『Waiting to Exhale』を手掛けた時のことを思い出していたよ」
惜しくも受賞は逃したものの、第66回グラミー賞「Best R&B Album」にノミネートされたこの『Gilrs Night Out』は、客演した女性シンガー達が楽曲の大半を歌い、Babyface自身はほとんど歌わないという、結果コンピレーション・アルバムのような形となりましたが、協力者達の多くからあがっていた「Babyfaceのクラシックを作って欲しい」という要望を最終的にBabyface自身が断り、結果としてこのスタイルになったとのこと。
「私はそれは望んでいなかった。少しだけ顔を出せれば十分だったから、私はほとんど歌わなかった。彼女達とデュエットをすると言っても、私は不気味なおじさんのように見られることが心配だったよ。『どうやって歌うんだろう?ペアにに見えないように、ただアドバイスをするだけの存在に見えるようにしようか』っていう感じでね」
このアルバムは、各アーティストとの制作時間が1人あたりわずか1日しか取れず、限られた時間の中で円滑に作業を進めるべく、Babyfaceは対面して話し合いながら制作をするという従来のやり方を選び、それぞれのアーティスト達の今の人生観などを聞きながらテーマを決めていき、決して「よし、この曲をやって、黙って歌って」というような、プロデューサー主導の強引なやり方は一切しなかったようです。
ハードなスケジュールの中、個性豊かな女性アーティスト達を見事1枚のアルバムにまとめ上げたBabyfaceでしたが、実は1人無名の女性シンガーだけが、残念ながら時間内にレコーディングを終えることができなかったとのことで、Babyfaceはこの女性シンガーについての詳細を聞かれると、ニヤリと笑いながらも彼女の素性を明かさなかったとのこと。
ちなみに、『Girls Night Out』が制作されることになった経緯は、2020年に行われたInstagramの無料生配信企画「Verzuz*」にてTeddy Rileyと競演したことがきっかけで、この後にBabyfaceの恋人であり、『Girls Night Out』のA&Rを担当したRika Tischendorfが、ニュー・アルバムの制作を勧めることに。
*「Verzuz」は、2人のアーティストがお互いの曲をかけ合ってバトルするInstagramの人気企画。
そこでBabyfaceが思いついたアイデアが、「New York Times」の記者James Hunterが「新しいR&Bにおける商業的かつ芸術的なピークの1つ」と絶賛し、全世界で1,200万枚を超える驚異的なセールスを記録した、Babyface完全プロデュースのサウンドトラック「Waiting to Exhale」の再現。
Whitney Houstonが主演を務めた'95年公開の「Waiting to Exhale」は、4人の女性の友情やそれぞれの人生観を描いたロマンティック・コメディ映画で、この映画のサウンドトラックに参加したアーティストも、『Girls Night Out』同様全て女性アーティストだったことで当時大きな話題となり、Babyface自身も「アルバムを作りながら、『Waiting To Exhale』のサウンドトラックを手掛けた時のことを思い出していたよ」とコメント。
以下の女性シンガー達が「Waiting to Exhale」のサウンドトラックに参加し、第39回グラミー賞にて、アルバム自体と収録曲などが計11部門にノミネートされるなど、正に歴史を作った偉大な作品でした。
・Whitney Houston
・Toni Braxton
・Aretha Franklin
・Brandy
・TLC
・Mary J. Blige
・Chaka Khan
・Sonja Marie
・SWV
・Chante Moore
・Patti LaBelle
・Faith Evans
・For Real
・Shanna
・Ce Ce Winans
Waiting to Exhale
V.A.
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