「紐パン」をテーマにしたおバカ・ソング"Thong Song"
'96年に発表されたデビュー・アルバムはプラチナ・ディスクを獲得し、'98年に発表されたセカンド・アルバム『Enter the Dru』は全米アルバム・チャート最高2位を記録しダブル・プラチナを獲得。
デビュー時から大成功し、'90年代を代表するR&Bグループとして知られるDru HillのメンバーとしてデビューしたSisqoは、'99年にソロでアルバム『Unleash the Dragon』を発表、2000年にリリースしたシングル"Thong Song"で大ブレイクしました。
Dru Hillが大成功していた時期にソロ活動をスタートするというSisqoの決断を、当時の関係者は誰も理解出来なかったそうですが、Sisqoは他の人がダメだということをやりたがる性分のようで、Sisqoの奇抜な髪型や服装もSisqo自身が自分らしくいる為に取っていた行動のようです。
Sisqo最大のヒット曲は全米シングル・チャート最高1位を記録した"Imcomprete"ですが、やっぱりSisqoといえば"Thong Song"のインパクトがとにかく強烈でしたね("Thong Song"は同チャート最高3位)。
「Thong」とは直訳すると「紐」を意味し、"Thong Song"とは「紐パン」「Tバック」のことで、いかにも他の人がやらなそうなSisqoらしい着眼点のおバカ・ソング。
そんな"Thong Song"は、結果的に時代を創った1曲となりましたが、実はこの曲のトラックは元々Michael Jacksonの為に作っていたと、"Thong Song"のプロデューサーTim & Bobが「Vice」のインタビューにて語っています。
「このトラックはMichael Jacksonに提供する予定の1つだったんだ」
Sisqo
Thong Song
iTunes: https://apple.co/3FDkXda
「今の曲は何だ!?」
SisqoのマネージャーKenneth Crearが、Joe, Boyz Ⅱ Men, Usherらの楽曲を手がけたプロデューサーBob Robinson(Tim & Bob)にコンタクトを取り、Sisqoがソロ・アルバムを作りたいと伝えたところから、"Thong Song"誕生の物語がスタート。
Tim & Bobは、当時Michael Jacksonに楽曲提供することを視野に入れていて、Sisqoとコンタクトを取る前からこれまでとは違う斬新な方法で新しいビートを作っていました。
Tim Kelley(Tim & Bob)は、米国のジャズ・ギタリストWes Montgomeryの楽曲を多くサンプリングしており、その中に後の"Thong Song"のオリジナル・サンプルとなった"Eleanor Rigby"が含まれていました(原曲はThe Beatles)。
Tim Kelleyが"Eleanor Rigby"をサンプリングしたビートを作り上げていき、Tim & Bobの2人は「Vice」のインタビューにて当時の様子を以下のように語っています。
「この曲がゲーム・チェンジャーになると確信した。
このトラックはあくまでMichael Jackson用のトラックで、Sisqoのことは考えていなかった。
そしてこの曲をCDに焼いて、そのままにしておいたんだ。
Sisqoが会いたいって言ったから、Sisqo用に主にバラードの曲を集めた。
でも、その時に間違えて"Eleanor Rigby"をサンプリングした楽曲を1番最初に流してしまったんだ。
このビートを聞いたSisqoは『今の曲は何だ!?』ってなったんだけど、『今のは何でもない』と伝えて次のビートをかけた。
誤魔化そうとして他の曲を大音量でかけたけど、Sisqoは『1番最初の曲に戻って』って言ってきたんだ。
Sisqoに『このトラックはMichael Jacksonに提供する予定の1つだったんだ』と真実を伝えたんだけど、彼は『お願いだよ』と懇願してきた。
そしてSisqoは彼の地元ボルティモア(米メリーランド州)に帰る飛行機に乗った。
そしたら機内から電話をかけてきて、『Tim, あの曲は自分のものにしたい。いくら必要?もしOKなら飛行機を乗り換えて直ぐにそっちに戻る』って言ってきたんだ。
アーティストがそれだけ曲やトラックを気に入ってくれたなら、もう渡すしかない。
それが他のアーティストの為に作った楽曲だったとしてもね。
自分たちのミスでSisqoに聴かせたし『だからこのトラックは君の物だ』って伝えたよ」
Wes Montgomery
Eleanor Rigby
iTunes: https://apple.co/3DwBkXc
「母親に紐パンの曲をどうやって聴かせるんだ?」
この出来事の翌日、Sisqoは直ぐにレコーディングをする為にTim & Bobの拠点ロサンゼルスに戻り、3人でスタジオ入り。 この時点でトラックは出来上がっていたようですが、リリックはまだ出来ていなったそうで、その夜にSisqoはデートをして、その時の女性が服を脱ぎ始めて初めて「紐パン」を見たとのこと。
もちろん、"Thong Song"のルーツはこの時の出来事。
Sisqoは当時の様子を「Vice」のインタビューにて以下のように語っています。
「"Thong Song"は、あの時のデートの話をしている。
『あのドレスはスキャンダラス』って歌う箇所は、リアル・ライフさ。
次の日に友達が来て、昨日デートした子が紐パンを履いてたんだぜって言ったら『え、何?』ってなった。
この曲のコーラスの部分を作る時、何を歌えばいいか分からなかったんだけど、その時そこにいた友達が『音楽を止めろ、昨日の女の子は何をくれたと思う?』と言ってきて、その後にこう口ずさんだ。
"The Thong, Thong, Thong Thong, Thong"って(笑)。
俺が『"The Thong, Thong, Thong Thong, Thong"って言ったらどうなると思う』って聞いたけど、みんな絶対にやらないよって笑っていた。
でも、コーラスのパートを作る時、部屋にいたみんなが"The Thong, Thong, Thong Thong, Thong"って歌っていた。
これで完成した、ヒットするって思ったよ」 Sisqo, そして彼の友人のアドバイスで完成した世紀のおバカ・ソング"Thong Song"ですが、この曲のトラックを手がけたプロデューサーTim & Bobは、同インタビューにて以下のように語っています。
「『曲のタイトル何だと思う? "Thong Song" だよ』ってなった。
母親に紐パンの曲をどうやって聴かせるんだって思ったよ(笑)」
Michael Jacksonも気に入った"Thong Song"
Ricky Martin"Livin' La Vida Loca"の1部を引用しているとのことで、Ricky Martin側から訴訟を起こされるというトラブルがあったものの、結果的に世界中で大ヒットを記録した"Thong Song"。
元々はMichael Jacksonに提供する予定だった楽曲だったこの曲は、何とMichael Jackson自身も気に入っていたようで、Michael Jacksonの友人として知られるJohn Mclainから「Michaelからの指示で、"Thong Song"よりもホットな曲を作れるなら、Michaelのスタジオで会おう」という電話が、Tim & Bobの元にかかってきたとのこと。 結果的にTim & Bob名義でMichael Jacksonに楽曲提供をすることは実現しませんでしたが、「Vice」のインタビューにて、Bob Robinsonは「Michael Jacksonから電話がかかってきたこと、そして彼が"Thong Song"を愛してくれたこと、本当に素晴らしかった」と語っています。
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