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執筆者の写真R&B SOURCE編集部

Shanice|"It's For You"を作ったポートレイトが振り返る。「もっと売れても良かった」

更新日:2024年1月21日


Shaniceの"It's For You"を作ったPortraitが振り返る。「もっと売れても良かった」

"It's For You"はShaniceの隠れた名曲?


"I Love Your Smile"のヒットで知られるShaniceが歌う、都会的で煌びやかな雰囲気で人気を集めた"It's For You"は、'93年にリリースされたシングル曲。


「私の気持ちが分からない?あなたのためよ(It's For You)。この愛が本物だと思わない?あなたのためよ」と歌うメロウなラブ・ソングで、全米シングル・チャート最高57位を記録。


Shaniceが'90年代にリリースしたシングルの総数は全15曲で、その内全米シングル・チャートでトップ100入りを果たしたのは、"It's For You"を含む以下の5曲でした。


全米シングル・チャート

I Love Your Smile (1991)

最高2位


Silent Player feat. Johnny Gill (1992)

最高31位


Saving Forever For You (1992)

最高4位


It's For You (1993)

最高57位


When I Close My Eyes (1999)

最高12位


当時のチャート結果だけ見ると、"I'm Cryin'"や"Turn Down The Lights"以上の結果を残した"It's For You"ながら、Shaniceのスタジオ・アルバムに収録されず、また'99年に発表されたベスト・アルバム『Ultimate Collection』に未収録だったことから、他の楽曲と比べて影の薄い1曲。


この曲をプロデュースしたのは、"Here We Go Again!"をヒットさせた男性R&BグループPortraitのメンバーEric KirklandとMichael Angelo Saulsberryの2人で、Michael Angelo Saulsberryが「BeatsBoxingMayhem」の記事に"It's For You"への想いを語っています。

「世間を騒がせたけど、もっと売れても良かった」

It's For You

Shanice



「もっと大きなアーバン・ヒットになるべきだった」


Shaniceが歌う"It's For You"は、彼女のスタジオ・アルバムではなく、Luther Vandross, Naughty By Nature, Big Daddy Kaneらも出演したコメディ映画「The Meteor Man」のサウンドトラックに収録された楽曲。


シングルカットもされ、記述の通り全米シングル・チャート最高57位を記録した"It's For You"でしたが、作り手であるMichael Angelo Saulsberryは、「BeatsBoxingMayhem」の記事に"It's For You"への想いを振り返っています。

「過小評価されていた。この曲がラジオでかかった時、『OK。なんだかクールな曲が出来た』と感じて、『The Meteor Man』のサウンドトラックに採用された。Robert Townsend(『The Meteor Man』の主演)はクールだと思うけど、あの映画が"It's For You"を売り出すのに十分人気があったかは分からない。"I Love Your Smile"は彼女のポップ・ヒットで、俺が作った"It's For You"はもっと大きなアーバン・ヒットになるべきだった。世間を騒がせたけれど、もっと売れてもよかった」


アーティストではなく、プロデューサー・チームになりたかったPortrait


"It's For You"の制作を担当したEric KirklandとMichael Angelo Saulsberryの2人が在籍していたグループPortraitは、'90年代初頭に米ロサンゼルスで結成され、'92年に発表したデビュー・シングル"Here We Go Again!"が全米シングル・チャート最高11位を記録し、いきなりの大ヒット。


Here We Go Again!

Portrait

また、デビュー・アルバム『Portrait』も全米アルバム・チャート最高70位という上々の結果を残すなど、デビュー直後からトップ・アーティストの仲間入りを果たすも、彼らは元々ソングライター/プロデューサー・チームになりたかったようで、デビュー後もその想いを持ち続けることに。


そんなPortraitは、デビュー後に[Motown Records]所属の3人組女性R&BグループThe Good GirlsのA&Rを担当していたDarrale Jonesと繋がり、彼がPortraitを気に入っていたことから、当時の[Motown Records]の看板アーティストの1人だったShaniceへの楽曲提供の話が持ち上がったとのこと。


ちなみに、このDarrale Jonesは2005年〜2013年までの間[Atlantic Records]の「Urban A&R」部門のシニア・バイス・プレジデントに就任していた人物で、あのCardi Bを同レーベルに引っ張ってきたやり手A&R。

Darrale JonesからShaniceに楽曲提供の話をもらったEric KirklandとMichael Angelo Saulsberryの2人は、自分達がアーティストだけではないという事を証明できるという理由でこの話に食いついたそうで、Shaniceに提供する為のデモ音源を制作。


結果的に"It's For You"と名付けられて世に出たこの曲は、コーラス・パートのメロディが抜群に心地良い1曲で、この「心地良さ」を感じる秘訣の1つである、Shaniceの美声を存分に堪能する為に確保された「コーラス・パートの十分なスペース」に関して、Quincy Jonesから習ったという「沈黙は音階」という教えを表現したと、Eric KirklandとMichael Angelo Saulsberryの2人は語っています。


デモ音源を制作していた時、あまりゴチャゴチャしないようにスペーシーにしようとShaniceに伝え、結果的にShanice本人も彼らが作ったデモ音源に夢中になったとのこと。


Eric KirklandとMichael Angelo Saulsberryの2人は、ポップ・ヒットした"I Love Your Smile"とは異なり、彼女の看板となるアーバン・レコードを作ることにフォーカスし、また当時Portraitのサウンドの評判も良かったので、Portrait流のサウンドをShaniceに提供。


ちなみに、Darrale Jonesが担当していたThe Good Girlsが、前年の'92年に"It Must Be Love"というシングルを発表していますが、この曲と"It's For You"の雰囲気はかなり似ていますよね("It Must Be Love"をプロデュースしたのは、Queen Latifahの楽曲を手がけたKyle HudnallとLucresia Holbdyの2人)。


It Must Be Love

The Good Girls



「俺達はニュー・ジャック・スウィング時代の一部だとも思っていない」


Shaniceの人気が絶頂だった'92年にデビューしたPortrait。


'92年当時と言えば、前年の'91年にHi-Five"I Like The Way (The Kissing Game)"が全米シングル・チャート1位を記録するなど、Teddy Riley発案のニュー・ジャック・スウィングがまだまだ人気を保持していた時期。


I Like the Way (The Kissing Game)

Hi-Five

そんなニュー・ジャック・スウィング熱がまだ冷めていない時期に、このスタイルを取り入れたシングル"Here We Go Again!"、"Honey Dip"などがヒットし、またデビュー・アルバム収録曲の過半数がアップテンポなスウィングR&Bだったことから、「Portraitと言えばニュー・ジャック・スウィング」というイメージが強いものの、メンバーのPhilip Johnsonは「The Root」のインタビューにて次のようにコメント。

「俺達はTeddy Rileyと一緒に音楽を作ったことは一度もないし、俺達はニュー・ジャック・スウィング時代の一部だったとも思っていない。デビュー前にニュー・ジャック・スウィングを色々と試したことはあったけど、最終的には俺達のサウンドとは趣向が異なった」

Commitment

Portrait

Philip Johnsonいわく俺達は17歳の頃からバラードやスタンダードな楽曲を書いてきたとのことで、彼らの意向通りデビュー・アルバム以降の作品ではスウィングR&Bを封じて、ミッドやスロウを中心とした内容にサウンドをシフト。


デビュー・アルバムではレーベル側の意向も含めてコマーシャル的な打ち出しもあったのかもしれませんが、セカンド・アルバム『All That Matters』からのサウンドが、真のPortraitの姿ということかもしれないですね。


All That Matters

Portrait


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