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執筆者の写真R&B SOURCE編集部

Muni Long|愛する夫へ捧げた"Hrs and Hrs"。そして破局の間際に大ヒットした"Made For Me"。

更新日:9月14日


muni long hrs and hrs

 愛する夫ととなら「何時間でも」


'88年生まれのMuni Long(マニー・ロング)は、21歳でアーティスト・デビューし(当時のアーティスト名はPriscilla Renea)、その後約12年もの間大きなヒットには恵まれなかったものの、33歳の時にリリースした"Hrs and Hrs"でようやくバズった遅咲きの苦労人。


TikTokでバイラルヒットしたことをきっかけに、"Hrs and Hrs"は全米シングル・チャート最高16位、また全米R&Bチャートでは1位を記録し、これがMuni Longにとって両チャートでの初チャートイン。


曲名の"Hrs and Hrs"は、「何時間も」という意味の「Hours and Hours」を略した表記で、愛する人とだったらどんなことでも「何時間もできる」という愛の喜びを歌ったラブ・ソング。


「何時間でも座ってあなたと話せる。


何時間でも座ってあなたを見つめていられる。


何時間でもセックスできる。


何時間でもあなたの胸に横たわれる。


何時間でもジョークを言える。


何時間でもあなたを抱きしめられる。


そして何時間も何時間も」


Hrs and Hrs

Muni Long

この「何時間も」という言葉に込めた意味は、父親の仕事の関係で転校を繰り返すという学生時代を過ごした影響か、何より1人でいるのが好きだというMuni Longにとって、「誰かと何時間でも○○できる」という状態こそが、本当にその人が好きかどうかを判断する基準になっているようで、この曲は愛する夫との関係性を歌った内容とのこと。


しかし、この曲は決してありふれたセックス・ソングではなく、本当のラブ・ソングであると、Muni Longは「VIBE」の記事にその想いをコメント。

多くの人が、親密さの本当の意味を理解していないと思う。必ずしも親密である必要はないけど、 "Hrs and Hrs"は親密さについて歌った曲で、一部の人はこの内容を不快に感じるかもしれない。性的にならずに親密さを表現する方法を、ほとんどの人は知らないと思うわ。私は結婚して8年経つけど、親密さを本当に楽しんでいるわ。例えば、時間を費やす、非言語的コミュニケーション、それら全てのことよ」

インタビュアーの「多くの人が本当の愛を経験していないゆえ、多くのソングライターがこの部分の表現に苦労しており、それが今のR&Bの問題の1つになっている」という指摘に対しても、Muni Longは持論を展開。

「愛情深い関係を築くには、あなたが一緒にいる人を許してやり直したり、思いやりを持ったり、やめたりするのではなく、無条件の愛を持っているかどうかにかかっていると思う。他の人と空間を共有することは決して簡単ではないけど、でもそれを見出すことは美しいことだと思うの。多くの場合、人間関係で人々は強い嫉妬を感じ、その人を愛することではなく、愛する人さえもコントロールすることを重要視してしまう。だから、あなたを励ましてくれる人がいると、とても力になると思うわ」

見返りを一切求めない「無条件」が愛の本質であるゆえに、長年連れ添う夫を愛し、夫から愛されているMuni Longだからこそ書けた、真実のラブ・ソング"Hrs and Hrs"。


恋愛経験はあまり豊富ではないというMuni Longは、夫と出会う前にデートした男性はいずれも「酷かった」と振り返っており、そんな経験があったからか、知的で精神的に刺激を与えてくれる人を望んでいたとのこと。


元々1人でいるのが好きだという恋愛奥手女子のMuni Longが、人生の伴侶として選んだ夫は精神的に成熟した人であるということは想像に難くないですし、そんな2人の充実した夫婦生活があったからこそ生まれた"Hrs and Hrs"だけに、"Hrs and Hrs"を成功に導いた陰の功労者はMuni Longの夫と言ってもよさそうですね。



 夫と決別する間際に大ヒットした名曲"Made For Me"


Muni Longの夫は、妻Muni Longの楽曲"Pain"、"Another"などを手がけたプロデューサー/ソングライターのRaysean Hairstonで、Mary J. Bligeが全面プロデュースしたサウンドトラック『Think Like a Man Too』に収録された"Wonderful"は、夫婦で手がけた楽曲。


Wonderful

Mary J. Blige

2人の間には一人息子がおり、結婚生活は順調かと思われものの、しかし残念ながら両者は2024年に離婚する決断を下し、Muni Longhは元夫Raysean Hairstonへの想いを、「The Cruz Show」に出演した際に次のようにコメント。

「私はドラマやくだらないことに時間を割く余裕がないの。今は私の人生で最も素晴らしい時期の1つで、もし一緒に祝ってくれないのなら、本当にごめんなさい。あなたを置いていかなくちゃならないの。これまでの私の人生において、あなたが最愛の人だったと気づくには、ものすごい強さが必要だと思うの。そして、あなたがもっとしっかりすれば、私にとって本当に素晴らしい存在になれるかもしれない。でも、あなたが追いつくまで、私の人生や情熱、幸せを止めて待つつもりはないわ。残念だけど、もしかしたら1年後にあなたは気づくかもしれない。でもごめんなさい、その時には私はもう気持ちが冷めていると思う」

離婚した詳細な理由は定かではないものの、Muni Longのコメントの内容だけをみて察するところ、"Hrs and Hrs"が桁違いのヒットを記録したことにより、Muni Longを取り巻く環境が激変し、この急激な変化に夫Raysean Hairstonが過度なストレスを背負ってしまったのか、結果的に2人の溝が深まってしまったように思えます。


そんなRaysean Hairstonの不安もよそに、Muni Longは"Hrs and Hrs"の後に発表したシングル"Another"や"Pain"も全米R&Bシングル・チャートで好調な結果を残し、2020年代を代表する女性シンガー/ソングライターとして着実にそのキャリアを積んでいくことに。


そして、"Hrs and Hrs"以来の大ヒットとなった楽曲が、2023年リリースの"Made For Me"。


この曲は、Usher"Burn"、Mariah Carey"Shake It Off"などを手掛けてきた、Jermaine DupriとBryan-Michael Coxという黄金のタッグがプロデュースを担当し、Muni Longは彼らと仕事をすることをかねてから望んでいたとのことで、制作時の心境を「The Making of "Made For Me"」にて次のようにコメント。

「JermaineとBrianの2人は、R&Bポップ・カルチャーにおいて最も素晴らしいプロデューサー/ソングライターよ。彼らと一緒に仕事をすること自体が「ワオ!」っていう感じ」

Made For Me

Muni Long

プロデューサーのJermaine Dupriは、この曲の制作時にTikTok上で流行していた楽曲などを綿密にリサーチした結果、2000年代を彷彿とさせるサウンド作りを目指したとのことで、Muni Long自身もこの曲には'90年代〜2000年代のクラシックな要素が含まれているとコメント。


まるで2000年代のMariah Careyが歌っていそうなこの"Made For Me"は、"Hrs and Hrs"以来となる全米シングル・チャートTOP40入りを果たし、同チャート最高20位という大ヒットを記録。


この曲の歌詞は次の通り。


「あなたの香水の香り、免疫があると思っていたわ。


この部屋には、あなたの痕跡を見ずにはいられない。


この瞬間は非現実的、この気持ちは言葉に出来ない。


ツイン(私の大切な人)、どこにいたの?


あなたほど私を知っている人はいないわ。


あなたほど私を愛してくれる人もいない。


私の目を見れば、嘘を付いているって分かるでしょ。


体と体、肌と肌、もうこんな恋は2度としない。


あなたは私のためにいるのよ」


Muni Longは、自分が知っていることしか話せないから、実際に体験したことしか曲に書けないと語っており、このことからも元夫Raysean Hairstonへの気持ちを綴ったであろう内容。


しかし、どこか2人の関係がギクシャクし始めていることを示唆しているような内容にも捉えられ、"Made For Me"リリース時はまだ離婚発表がされる前ながら、この時点で両者の関係は少しずつ歪み始めたのかもしれず。


もしくは、Muni Longの「クラシックな要素が含まれている」というコメントから推測してみると、Faith Evansが夫The Notorious B.I.G.に対して"Soon As I Get Home"で訴えたように、「夫にはこうあってほしい」という理想を歌い、夫自らに何かを気付かせたかったのかもしれないですね。



"Made For Me"は、2024年8月リリースのアルバム『Revenge』に収録され、この作品について「The Cruz Show」のインタビューでMuni Longは次のようにコメント。

「このアルバムはまるで私の日記の1ページのようなもの。この作品で、初めて自分のプライベートを音楽で語ったわ」

ちなみに、アルバムのラストに収録された「私を台無しにした」という意味の"Ruined Me"は、ズバリ離婚を決意した後に書かれた、元夫Raysean Hairstonへ向けた「別れの歌」でした。


「毎晩泣いている。


眠れなくてダイヤをつけたままベッドに横たわっている。


まだ指輪もしているの。


他の誰かなんて想像できない。


痛みが強すぎて、あなたに置き去りにされてから何もかもが変わってしまった。


あなたの後、もう二度とあんな恋はできない。


この心の傷は決して癒えない。


ベイビー、あなたが私を壊したの」


Ruined Me

Muni Long




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