元々はLupe Fiascoの為に作られていた"Nothin' On You"
どこまでもポジティブで明るい雰囲気と、キャッチーで聴きやすい高揚するメロディが特徴の"Nothin' On You"は、ラッパーのB.o.BとシンガーのBruno Marsという、当時全くと言っても良いほどの無名だった2人が、音楽シーンに一大センセーションを巻き起こした歴史的大ヒット曲。
B.o.B
Nothin' On You feat. Bruno Mars
iTunes: https://apple.co/3PVNOhU
2週連続で全米シングル・チャートを制覇、そして"Nothin' On You"を収録したアルバム『B.o.B Presents: The Adventures of Bobby Ray』も全米アルバム・チャートを制覇し、また受賞こそ逃したものの、"Nothin' On You"は第53回グラミー賞にて3部門にノミネート。
Bruno Marsにとってもいきなりの出世曲となったこの"Nothin' On You"でしたが、実は元々はB.o.B用の曲ではなく、ラッパーLupe Fiascoの為に作られた楽曲でした。
この事実を明かしたのは、プロデューサーのJim JonsinとLupe Fiasco本人。
Jim Jonsinは、「MTV」のインタビューにて次のように答えています。
「スタジオでセッションしている時に、[Atlantic Records]の会長Craig Kallmanから電話があったんだ。
当初、Lupe Fiasco用の曲として用意されていた。
そして俺はCraigに言ったんだ。
『この曲を本当に気に入ったよ。シングルにすればヒットすると思うけど、Lupeの曲としては相応しくないと思う。この曲はB.o.Bの為に必要だ。是非B.o.Bに使わせてほしい』 とね。
そして、B.o.Bがこの曲を手に入れたんだ」
Jim Jonsinと言えば、2000年代に名を馳せた音楽プロデューサーで、以下の楽曲が主なJim Jonsinのプロデュース作。
・Pretty Ricky - Your Body (2005)
・Lil Wayne - Lolipop (2008)
・T.I. - Whatever You Like (2008)
・Beyonce - Sweet Dreams (2009)
・Nelly - Just a Dream (2010)
Jim Jonsinは"Nothin' On You"の制作には携わっていないものの、2006年に[Atlantic Records]と業務提携した自身のレーベル[Rebel Rock Entertainment]を立ち上げ、このレーベルと契約したのがB.o.Bでした。
レーベルを軌道に乗せる為の起爆剤を欲していたのか、Lupe Fiascoの為に用意されていた"Nothin' On You"をB.o.Bの為に横取りしてしまったJim Jonsin。
ちなみに、Lupe Fiascoがラップする"Nothin' On You"のデモ音源も残されています。
Lupe Fiasco
Nothin' On You feat. Bruno Mars
結果、このデモ音源で披露したLupe Fiascoのリリックとパフォーマンスを、関係者達が「ダサい」と繰り返し酷評し、当時は自殺を考えるほど追い詰められたと、Lupe Fiascoは「The Guradian」の記事に答えています。
真相は不明ですが、"Nothin' On You"を是が非でも手に入れようとする根回しがあったとしたら、Jim Jonsin恐るべし...
"Nothin' On You"を横取りされ、一時はどん底にまで突き落とされたLupe Fiascoでしたが、"Nothin' On You"の発表から約1年が経過した2011年にアルバム『Lasers』を発表し、Lupe Fiascoはこのアルバムで見事全米アルバム・チャート1位を達成しています。
余談ですが、当初"Nothin' On You"でBruno Marsのコーラスは含まれない予定だったようですが、歌っている時のBruno Marsのカリスマ性により、最終バージョンをレコーディングした後もBruno Marsのボーカルを残すことをレーベル側が決断。
また、コーラス・パートのメロディはBruno Marsによるアイデアだったようで、「Rolling Stone」の記事によると、Princeの"The Most Beautiful Girl in the World"からインスピレーションを得たとのことです。